ウイスキー文化研究所が発表した「Y.A. ブレンデッドモルト ジャパニーズウイスキー『ウマッ!! 72 土屋×本坊 記念ボトル』」は、単なる記念ラベルの限定品というより、マルスウイスキーの複数拠点が持つ個性をひとつのボトルに収めた企画として見たい。土屋守氏と本坊和人氏がともに1954年2月生まれで、誕生日も近いという個人的な縁を起点にしながら、内容面では駒ヶ岳、津貫、屋久島という本坊酒造のウイスキーづくりを象徴する要素が重ねられている。
今回の中身は、駒ヶ岳のライトピーテッド原酒と津貫のノンピート原酒をそれぞれバーボンバレルで約4年熟成し、ブレンド後にミズナラの新樽でさらに3年追熟したものとされる。駒ヶ岳は中央アルプス山麓の冷涼な環境を背景に、比較的きれいで芯のあるモルト感を出しやすい。一方、津貫は鹿児島の温暖な環境を反映し、厚みや熟度、南国的なニュアンスを帯びやすい。ライトピーテッドとノンピートの組み合わせは、煙さを主役にするというより、ブレンド全体に輪郭と陰影を与える狙いがあるだろう。
さらに重要なのが、屋久島エイジングとミズナラ新樽フィニッシュの組み合わせだ。屋久島は本坊酒造が近年押し出している熟成拠点のひとつで、湿潤で温暖な島の環境は、樽材由来の成分や熟成感の出方に独特の影響を与えると考えられる。そこにミズナラ新樽を合わせることで、香木、和のスパイス、樹脂感、ほろ苦さといった要素が前景に出やすくなる。発表されているテイスティングコメントでも、香木、ココア、バニラ、柑橘のほろ苦さ、ラズベリー、蜜蝋、オレンジピールといった表現が並び、甘さだけで押すタイプではなく、木質感と果実味、コクをどう均衡させるかに焦点が置かれていることがうかがえる。
「Y.A.」は屋久島エイジングを意味するシリーズとして、マルス駒ヶ岳やマルス津貫とは異なる熟成地の個性を伝える役割を担ってきた。今回の記念ボトルは、通常の銘柄展開とは少し異なり、人物の節目を祝うストーリー性を持つが、原酒構成を見ると、単なるコレクター向け企画にとどまらない。駒ヶ岳と津貫の原酒を組み合わせ、さらにミズナラ新樽で長めに追熟する設計は、ジャパニーズブレンデッドモルトとしての立体感を意識したものだ。
総本数は246本とされ、オンラインショップでの会員限定販売分は50本と発表されている。ラベルには土屋氏と本坊氏の学生時代の写真が採用され、ウイスキー文化の発信者と造り手の関係性が前面に出た、かなり記念色の強いボトルになる。飲み手にとっては、味わいの完成度だけでなく、ジャパニーズウイスキーの発展を支えてきた人と企業の接点を記録する一本という意味合いも大きい。コレクターにとっては、本数の少なさ、会員限定という販売条件、屋久島エイジングとミズナラ新樽追熟という仕様が重なり、二次的な注目を集めやすい要素を備えている。
ただし、限定ボトルは販売開始後に条件や在庫状況が変わることがある。発売日時、価格、販売本数、会員条件、送料、購入可否については、必ずウイスキー文化研究所の公式発表および公式オンラインショップの最新情報を確認してほしい。
参考情報:株式会社ウイスキー文化研究所発表資料